Q 夫と離婚して、私が子供の親権者になりましたが、私は癌と宣告されてしまい、余命が長くありません。子供はまだ中学生で、成人するまでにはかなり期間があります。
私が死んだら、親権者は自動的に夫になるのでしょうか。夫はアルコール依存症でしたので、親権を任せたくありません。どうなるか教えてください。
A ご懸念のように、アルコール依存症で、離婚時に親権を任せられなかった元夫に、あなたが亡くなったあと親権が行ってしまうようでは困りますね。法律は、このような場合も想定して、あなたのような単独親権者が死亡した場合には、当然に片方の実親の親権が復活するのではなく、後見が開始するとしています。
後見が開始するというのは、親権者ではなく、後見人という親代わりのような人が裁判所から選ばれて、子どもの面倒を見ていくということを指しています。
例えば、あなたの親戚の誰かが、あなたが亡くなった後、あなたの子どもの面倒をみるので、自分をあなたの子どもの後見人に選任してほしいという申立てを家庭裁判所に行い、後見人に選任してもらう、ということになります。裁判所がその人をあなたの子どもの後見人として選任すれば、その後は、その人が親代わりになります。なので、当然に、あなたの元夫が親権者になるという訳ではありません。
ただ、この場合、後見人選任の申立てを行わないといつまでたっても正式に後見人が選任されないということになってしまいます。なので、自分が死んだあとは、この人に子供の面倒を見てほしいという人には、今のうちに話をして了解をもらい、あなたが亡くなった後にすぐに手続きを行ってもらえるようにしておくというのも一つの方法です。
もう一つの方法は、遺言で、後見人の指定をすることです。この場合は、その指定された人は、あなたが亡くなった時から自動的に後見人に就任したことになり、家庭裁判所で選任してもらう手続きは不要となります。なお、指定された後見人は、あなたが亡くなってから10日以内に、後見開始の届出を役所にしないといけません。
ただ、遺言で指定するにしても、指定された人が自分が遺言で指定されていることを知らないと、遺言の中身がわかるまで時間がかかってしまう可能性もあります。
したがって、いずれの方法をとるにしても、死後子供の面倒を見てもらう人には今からお願いをして手続きがスムーズにいくようにしておく必要がありますね。まあ、死後、自分の子どもを託すわけですから、当然のことと言えば当然のことになるかと思います。
なお、あなたが亡くなった後、元夫が、自分が面倒を見るんだと言いだした場合どうなるかと言う点についても触れておきます。その場合、元夫が親権者になるためには、裁判所に親権者の変更の申立てをする必要があります。元夫がその申立てをすると、裁判所は、あなたの子どもにとって、あなたが依頼(指定)した後見人か、実親である元夫が、どちらが適切かを慎重に判断することになります。アルコール依存症で問題行動があったような場合には、実親であるからという理由で、元夫を親権者にする、ということは考えにくいでしょう。
実際の事例でも、実親ではなく、実際に長年養育をしてきた伯母を後見人として認めたケースなどもいくつもあります。ですので、その点については、あまり心配しなくていいのではないかと思います。
くわしいことは沖縄弁護士会の弁護士に相談してみてください。